きこえない人に「音」を見せるONTENNA開発者 本多達也さん

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今回のインタビューは、ろう者のために「音が目に見える形で分かる」アクセサリーを開発した本多達也さん(きこえる方です)へのインタビューです。(インタビューはスタッフのくまちゃんもとい小笠原さんという方にしていただきました。)

小笠原さんから本多さんに、なぜ「音が目に見える形で」アクセサリーを作ったのかなどを色々と聞いてみました。

ろう者との出会いがもたらしたONTENNA

本多さんは、以前公立はこだて未来大学のシステム情報科学部情報アーキテクチャ学科で、情報やセキュリティについて学んでいました。
その当時からデザインとテクノロジーの力で社会の課題解決を目指すデザインに興味があったそうです。

そして本多さんは、大学の文化祭でろう者と出会ったとのこと。OLYMPUS DIGITAL CAMERA

そのろう者が文化祭で何かに困っていたので、自ら声をかけて身振り手振りで大学構内を案内しました。

すると、そのろう者から別れ際に温泉に誘われ、そこから交流が始まったとのことです。

それがきっかけで、大学の研究テーマで、テクノロジーとデザインを用いてろう者に音を伝えることを考え始めるようになり、その後、本多さんが大学4年生だった2012年に、今のONTENNAの原型となる研究が始まったとのことです。

引用:http://thebridge.jp/2015/08/ontenna-lets-you-hear-sounds-through-your-hair

ONTENNAとは

【2種類あります】

●髪の毛に無理なくつけられるクリップ形式

●イヤリング形式

【音を振動や光で伝えることができます】

●今いる環境で出ている音を全て伝えます

●30db~90dbの音圧を、256段階の振動と光の強さに変換することで音のパターンをリアルタイムに振動と光で伝えます

 ⇒例:掃除機の音や洗濯機の音なども全て伝えることができます

★渋谷などの人が多い所に行くと常に振動してしまいます。これについてはまだ開発中です。

OTENNA開発サイトはこちら⇒http://ontenna.jp/

show-earring

ONTENNA開発までの道のり

―ろう者の皆さんと協働で進めたプロジェクトで今のONTENNAの形になった

「指先や腕などいろんな部位を試しました。ろう者の方は手話を使ってコミュニケーションをとるので、腕につけるのは邪魔になります。いろいろ試行錯誤した結果、テンションがかかることで振動を感じやすく、皮膚に直接触れない髪の毛にたどり着きました」

「ろう者の人と、耳が聞こえる人とに実験に協力してもらった時のこと。オンテナを左右に1つずつ計2つ付けた状態で、音がどちらから来るかをボタンで知らせてもらうものでした。すると、ろう者の場合、刺激音があった瞬間にボタンが押され、振動にとても敏感であることがわかりました。」

「振動は、あまり強過ぎても不快になるし、弱過ぎると気づくことができません。」

バイブの振動バランスに苦労したとのことです。

引用:http://thebridge.jp/2015/08/ontenna-lets-you-hear-sounds-through-your-hair

ー開発するうえで困難だったことを教えてください

本多:困難・・・(しばらく考え込む)いろいろありました。

まず外装デザインですかね。3Dプリンターを使用してはじめは四角のデザインのものを作ったのですが、「髪につけたときに痛そう」などの意見があったため形がどんどん変わり今の丸みを帯びたデザインになりました。

また、基板設計も苦労しました。LEDやバイブ・マイクの位置に苦労しました。LEDは真ん中の方にしたら発光する範囲が広がるのがいいなと思い真ん中になりました。

音の方向や距離もとらえるONTENNA

ーONTENAは掃除機の音とインターフォンの音の違いが分かるとのことですが、発する音によって色も変えられるのでしょうか

本多:フルカラー実装なので色を変えることができます。

色にもいろいろな意味がありますよね。赤だと危険とか・・・いろいろな色を試した時に青色が一番違和感なく自然に溶け込む色だと思ったので、青色にしました。

 what

ー音の方向や距離感を振動に変えるとFRESHFACE(動画)で紹介されていたのですが・・・距離感は振動の強弱という説明で想像ができるのですが、方向はどのような振動でわかるのでしょうか?

本多:方向は二つつけるとわかります。左右につけていただいて右側のほうが強く振動すると右側からの音だななど。

きこえる人にも反響が大きいONTENNA

―聞こえない人だけでなく聞こえる人からの反響はどんなことがありますか?

本多:聞こえる人からの反応は結構あります。

例えば、「イヤホンで音楽を聞いて歩いているとき、車が後方から来たというのが振動で分かったよ」ってことがあったり、クラブイベントで使ってみたいとか原宿とかでつけている人がいそうなど・・・。結構受け入れてもらえてます。

ー私はアニメが好きなのですが、初めてONTENAを見た時にアニメのエヴァみたいだと思いました(笑)

本多:あぁ、よく言われます(笑)僕はエヴァについてはわからないのですが。

こういうのを受け入てくれるのも日本の風土というか・・・

海外の取材もうけるのですが、アメリカの人などに「こういうデザインを思いつくなんてすごい」と言われたりするんです(笑)

ーろう者・難聴者だけでなく、例えば耳が遠くなった高齢者や聴覚過敏な発達障害者にも良いなと思ったが、今後はろう者だけでなく、老人ホームや発達障害者対象にも宣伝することは考えていますか?

本多:(聞こえる人からの反響もあるので)もちろん、そういった方たちにも音を楽しんでもらいたいと思います。たくさんの方に音を楽しんでもらいたいです。

ONTENNAの未来の姿

 

ーONTENAは今後男性でも気軽に使えるようにキーホルダータイプや腕に巻くタイプなどの開発は考えてますか?

本多:コンセプトが「まるで、ねこのヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛で音を感じることのできる装置」なので髪やイヤリングなどにつけるデザインになっています。

ただ、今後は男性でも気軽に装着できるボタン型などを考えています。

また、外装も様々な形になればな・・・と。

例えば3Dプリンターをつかって自分の好きなデザインにするとかができたらいいなと思っています。

intro

デフリンピックにもONTENNAを

「少し先になりますが、2021年のデフリンピックでろう者の選手にONTENNAをつけて競技に望んでほしいなと思ってます。

例えば、陸上選手が足を踏み出すリズムやタイミングを練習するとき、ONTENNAをつけることで音を頼りにできるようになることで記録が伸びるかもしれません。

ONTENNAによって新たな記録が生まれる、そんな未来がくれば良いなと思っています」

引用:http://thebridge.jp/2015/08/ontenna-lets-you-hear-sounds-through-your-hair

hope

ー本多さん、多忙な中時間を作っていただき、多くの質問にも丁寧に答えていただき、ありがとうございました。

ONTENNAは画期的な商品だと思うので、実用化を期待しています。

そしてこちらももっと多くの方々にONTENNAを知っていただけるように宣伝させていただきたいと思います。

ありがとうございました。

OTENNA ⇒http://ontenna.jp/

公立はこだて未来大学サイトでの本多さんへのインタビュー記事 ⇒http://www.fun.ac.jp/funbox201507/

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