今回は、兵庫県在住のろう者、中江さんという方に防災士についてインタビューさせていただきました。
今回のインタビューはHAPUNEスタッフのりっちゃん、そしてインタビューと写真撮影も一緒にお願いしたかったので、DEAF(ろう者)カメラマンとして活動している山崎祐介さんという方にもお願いしました。
りっちゃん、そして山崎さんも素敵な写真とインタビューありがとうございました!
★インタビューは本人の言葉をそのまま載せています★
目次
防災士の資格を取ったのは震災がきっかけ!ろう者でも資格が取れる?どんな資格?
実は中江さんは、関西でろう者として防災士の資格を取った数少ない人の1人です。
(他は全国にもいるようです)
ここでは、なぜ防災士の資格を取ろうと思ったのか、そのきっかけや防災士はどんな資格なのか、また、どんなことをするのかなどをお聞きしました。
阪神大震災発生!家族と連絡が取れない・・
昔、阪神大震災がありましたよね。
その時、僕は筑波技術短期大学卒業後、スグ会社入った直後、阪神大震災が起こりました。
阪神大震災が起こった時、僕は最初は何も知らなかったのですが、テレビや親の知人から教えてもらいびっくりしました。
親も兵庫県に住んでいたのですごく心配でした。
でも、家族に連絡をしたかったけど、当時は電話やファックスしかなかったと思うし、阪神大震災が起こった時はファックスが使えませんでした。
まだ携帯(メール)がなかった時代だったので、家族と連絡が出来ずどうなっているのか分からず不安でした。
一週間後連絡が取れてホッとした
毎日、家族と連絡を取りたくてファックスしましたが、電話がつながらなかったためファックスもつながりませんでした。
毎日不安でしたが、一週間後、やっと電話が通じるようになり、ファックスもできて家族と連絡が取れました。
その時は本当にほっとしたことを覚えています。
すぐに現地に行きたかったけど・・・
もちろん、家族の顔が見たかったし、家がどうなっているのか知りたかったので、現地にすぐに行きたかったです。
でも、交通が混乱していたので、すぐに現地に行けませんでした。
なので、親からの言葉を信じるしかなかったです。
それからしばらくして、やっと兵庫の家を見に行けたのですが、家は半壊の状態でとてもひどく、ショックを受けました。
親は無事で本当に良かった、と思いました。
情報が入らない・・・
当時は今と違って、携帯もPHSやFAXしかない時代だったので情報が入らず困りました。
また、テレビも字幕が今よりももっともっと少なかったので、新聞や友達からの情報しかなく、遠く離れた兵庫の家がとても心配でした。
今は字幕も増えてきていて、私個人としては字幕だけでも十分と思っています。
でも、高齢者や日本語が苦手なろう者もまだまだ多いので、そういう方々のためにも手話も必要だと思います。
字幕だけで充分、と思っている人でも、他の色々な立場の人たちのことも考えるべきだと思います。
防災士の資格との出会い
それから数十年経ち、東日本大震災が起こってしまいました。
その後、去年熊本地震が起こる少し前にたまたま防災士の資格と出会いまいた。
防災士とは
゛自助゛゛共助゛゛協働゛を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを、日本防災士機構が認証した人です。
引用:http://bousaisi.jp/about
この防災士という資格は、インターネットで偶然知り、最寄りの市役所に更なる詳細を尋ねに行った訳です。
そして、市役所から更なる詳細を教えて貰ったのです。
もともと、阪神大震災で家族が色々とあったため、この防災士の資格には大変興味がありました。
また、市役所から推薦状を書きますよと言われたこともあり、習得する決心をしました。(兵庫県のみの方法です。)
そして、市役所から教えてもらった学校で資格の勉強を始めました。
こちらに、防災士になる方法が載っています。
時間がある時に見てみてください。
防災士の勉強
防災士の勉強は、兵庫県の学校でやりました。
学校といっても、みんなが考えるような学校ではなく、兵庫県にある消防学校で受けました。(兵庫県のみの方法です)
学校の写真

これについては、兵庫県だけでなく他のところでも勉強できるので、一度、ホームページをチェックしてみてください。
http://www.bousaishi.net/
手話通訳をつけてもらえたのでよく分かった
私はろう者ですので、勉強に不安がありましたが、この手話通訳は兵庫県が直にお願いして下さったので安心して授業を受けることができました。
講義では、私は一番前に座って手話通訳を見ながら受けました。
また、質問したい時も手話通訳の人に通訳してもらい、その方法で先生とやり取りしながら勉強していきました。
仲間と協力し合いながら楽しく勉強できた
防災士の勉強をしている時は、周りの仲間たちも協力してくれました。
例えば、仲間たちと一緒に勉強して、分からないことがあればお互いに教えあったりというのもしました。
講義の様子

ちなみに、この時の仲間たちは、ろう者、盲ろう者(弱視)、手話ができる聞こえる人もいました。
この時に、色々な障害を持つ人たちも、この防災士の資格を勉強していると知ってびっくりしました。
防災関係の手話は統一が必要では?
この時に、授業中、防災士の専門の言葉を手話で表す方法が分からないことがあり、それも皆で考えながら勉強しました。
いつか、防災士としてろう者を助ける時に、手話が分からなかったり、また、お互いに手話が違っていたら困ります。
そういう時のためにも、防災関係の手話は全国で統一した方がいいと思います。
今の手話は、全国で、県によってバラバラのものがあります。
例えば、「名前」の手話も東日本と西日本で違いますね。
でも、防災関係の手話は全国で統一した方が安心だと思います。
でないと、手話ニュースで地震関係のニュースなどを見ても、東日本の人には通じても西日本の人には通じないということがあって困るかもしれません。
今は、防災関係の手話は全国で同じものもあるかもしれませんが、統一していくことは大事だと思います。
防災士の資格を生かしていく
実は、熊本地震が起きた時は資格を取ったばかりだったのです。
それで、熊本地震が起きた時は何も出来ませんでした。
防災士の資格が取れた時は嬉しかったのですが・・・。
でも、次にまた地震が来た時は防災士として資格を生かしながら周りの人たちを助けられるようになっていきたいと思います。
写真は防災士のバッジです

防災士としての活動
今は防災士の資格を生かすため、地震に対しての基本的な知識を講演したり、また、飲み会や雑談の時などでも友人に防災の知識や地震の危険性を話したりしています。
また、【地震が起こったよりも起こる前に事前に準備や心構えなどをした方が生き延びやすい】ということを防災士としてお話しすることもしています。
やはり普段から皆にも意識してもらうことが大事だと思っています。
今、防災士として思うこと
防災士の資格を取ってから、防災士になる前は分からなかったことが色々と分かるようになりました。

防災士は色々な障害者にこそ必要!
防災士は健常者だけではなく、ろう者も多くの人が勉強して資格を取るべきだと思います。
また、ろう者だけでなく、色々な障害を持つ人たちも防災士の資格を取った方がいいと思います。
理由として、健常者では分からない、サポート方法や色々な障害を持っている人が困っていること、必要としていることを防災士の立場でカバーできることがあるかもしれないからです。
ろう者に対しては心のケアもできる!
心のケアの専門家ではありませんが、防災士がいるというだけでも安心する人は多いと思います。
また、避難所など色々なところにろう者の防災士がいると、手話で相談もできるし、安心する人はいっぱいいると思います。
特に、今は様々な専門家や学者たちが「今、日本は様々な地震が多くなる活動期に入っている」「これからも大きな地震が起こる可能性は高い」と言っています。
なので、やはりろう者もたくさん防災士になってほしいと思います。
ろう者が気を付けてほしいこと
特に情報収集力(いろんな情報を集めることが出来る事)を磨いていってほしいです。
ろう者は、耳が聞こえないので、テレビや周りの人たちから情報が入りません。
なので、自分から情報を探す力を身につけることが大事だと思っています。
そして、【いつでも地震が起こる】ということを頭に入れてほしいです。なぜならば、日本は地震大国なので…。
聴者が気を使ってほしいこと
これは地震など、避難所での生活でも同じですが、そういうピリピリした時、聴者はコップを置く時に発生する音などにも敏感になっている状況です。
でも、ろう者はその音が分からないのと、コップをどのくらいの強さで置けば音が静かになるのかも分かりづらいので、そこから周りの人たちとトラブルが起こったりすることがあります。
なので、避難所にろう者がいたら丁寧に注意するか、または、優しく教えるか、などをしてほしいと思います。
以上、長くなりましたが、皆さん、日本は地震大国であることを意識して、今後も気を付けながら防災を一緒に考えていきましょう!
全員へ伝えたいこと
実はこのインタビューの後、中江さんから「これを追加で載せてほしい」と、メールをいただきました。
以下、中江さんのメールの全文を載せます。(文章はそのままコピーして中江さんの言葉で伝えておきます)
私が講演時に、皆さんに何時も伝えてる事は、 『大地震を怯えるでななく、大地震と上手く付き合う事が重要です!』 …です。
説明します。
地球は、生きてる超巨大生命体です。⇒基本的、あらゆる生命体は、何かしらの生理反応起こす⇒我々ニンゲンの場合、食う・寝る・排泄…などの生理反応。⇒地球の場合、地震や台風などの気象と地理が、生理反応です。⇒即ち、地震が完全に無くなるって話は、絶対無理な話です。⇒ソレでも、地震が大嫌い!って方居たら、地球を捨て去り、他の惑星に引っ越ししか方法無い。…と話してます。⇒なので、我々ニンゲンが、大地震に慣れる必要が有ります…です。
今現在、ろう者の皆さん、台風怯えますか?
⇒台風怯える、ろう者たち居ないハズ(仮に居るなら、台風で死にそーな目に遭った経験有る人位です。)と、思われます。 ⇒ナゼ??? ⇒現在、天気予報の科学技術進歩と、台風の防衛知識が、一般市民に(勿、ろう者も)広く浸透してるから、 今現在、台風で怯える人は激減してます。
…が!!! 江戸時代以前の人々は、台風を怯えてた(悪魔襲来のと同じ感覚で)。 ⇒江戸時代以前、台風1コ襲来時は…!??? 平均、約千人以上の死者発生(勿、台風1コ襲来につき)してました。 ⇒ナゼ??? ⇒江戸時代以前は、気象技術と、台風に対する防衛知識が、無かったから、大量の死者が出た…です。 なので、私としては、ろう者の皆さんに、大地震に対する感覚を台風時と同じ感覚に変えるべく、お手伝い出来れば…と、思ってます(勿、地震に対する、防衛知識を広める意味で)。
・・・とのことです。
要は、地球の仕組み上、地震が起こるのは当たり前なので、地震におびえるのではなく、地震と向き合うことが大事、ということですね。
そして、台風におびえるろう者はいない(地震と比べて、いつ来るか予測しやすい&備えの知識もある・・などの理由で)ことから考えると、地震に対してはおびえるのではなく、地震に対する備えをしっかり持つことが大事、と言いたいのですね。
その通り、地震に対してもしっかりと防災知識を持ち、また、普段から備えを用意したりなど・・色々な準備をしっかりしておけば地震は怖くない!のかもしれませんね。
中江さん、最後の最後まで色々とメッセージをありがとうございました。
今回は防災士の資格を持っているろう者ということで、中江さんへインタビューさせていただきました。
彼は、Facebookでも時々防災の知識を書いたりして情報を皆さんに与えてくれています。
また、他にも、Facebookの震災関係のグループの情報もシェアしたりしてくださっており、大変防災意識の強い方だと思います。今後、中江さんは、「ろう者・難聴者・中途失聴者のための震災情報サイト」にも協力してくれることになっていますので、こちらの方でも活躍を期待しています!
皆様今後も中江さんへの応援よろしくお願いいたします。
中江さんのFaceboookページ
https://www.facebook.com/profile.php?id=100011255469859
ろう者・難聴者・中途失聴者のための震災情報サイト
Facebook ⇒ https://www.facebook.com/deafzisinzyoho/
ホームページ ⇒http://deafzisinzyoho.com/